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心理臨床オフィスまつだ

引っ越しでうつ病?

押しつぶされる うつ社会

引っ越しを経験することは大きな人間的成長をもたらすのではないかと感じることがあります。

引っ越しをするにはずいぶん苦労をしますが、そこで得られる諸体験は後々の人生に有益なものを含んでいることがあるのではないでしょうか。

生涯90回以上の引っ越しを経験したという日本画家が有名ですが、作品のヒントは引っ越しがもたらしていたのかもしれません。

引っ越しうつ

さて、一方で引っ越しうつという言葉があります。現代風に言えば、引っ越しは環境の変化が大きいために、心身のバランスを崩しやすい可能性を持つイベントと考えられます。歴史的には、うつ病に移行する可能性が古くから議論されてきました。

引っ越しはやはり、うつ病に移行してしまうほどインパクトのあるイベントなのでしょうか。

実際、新しい街へたった一人で出ていくことは非常に勇気のいる行動でしょう。

一体どこで買い物をしたらいいのか、友人はできるのか、電車やバスの状況はどのようなものだろう、お隣さんはどんな人なのだろう、などと頭に浮かぶことはたくさんありそうです。

うつと言うことですから、実際、うつ病に関係する不眠や気分の落ち込み、倦怠感なども出現するのでしょう。

引っ越しでそのようなことが起きるのか?と疑問に思う方もいることでしょう。

それぞれの引っ越し体験

引っ越しを体験する年代は様々です。

それぞれに受け止めも違うものがあるかもしれません。

学生の場合

まず、学生さんですが大学や専門学校進学をきっかけに上京したり、大都市で暮らすことになるということがあるかと思います。また、実家から無理すれば通える範囲であっても、年齢的に一度外に出てみたいという動機で引っ越しをする人もいることでしょう。

学生さんの場合であると、まさに人生初めての引っ越しとなることがほとんどでしょう。 両親の事情などで引っ越しを経験していたとしても、自分主体の引っ越しとはまた意味が異なるはずです。

なんとか引っ越しはうまく行ったけれど、引っ越し後の生活に手いっぱいで、学校に出ていのは大変という状況の人もいることでしょう。

 

転勤、単身赴任の場合

職種によっては必ず転勤がある会社もあります。東京本社とか大阪支社を行ったり来たりしている人も多いでしょう。会社の寮などが整備されているところもあるかと思いますが、それでも新しい土地には慣れるのに時間がかかったりするものです。

単身赴任の場合は、奥さんや子供と会えなくなってしまうという点も大きな変化であって、家事を奥さんにまかせっきりだった方は、その点についても苦戦することが多いでしょう。

主婦の場合

テレビの報道で公園デビューなどということが取り上げられる機会がありました。主婦同士の人間関係もなかなか難しいものがあるようです。

働いている人であると、土地の変化というものは、職場に出ていくことでなんとなく徐々に埋められていくように感じますが、一人子育てなどするために家に残っている主婦の方は、近場に知人もおらず、孤独な点に苦労を想像します。

また、主婦の心理として難しいことに、夫が働いている中、自分は家にいるという罪悪感に苛まれるということもあり得るでしょう。夫は、引っ越しししてすぐに働きに出たのに、私は・・・、などと一人で考えているとしたならば、非常に思い心理的負担が想像されます。

引っ越して感じること

このように、引っ越しを考えると、できれば引っ越しなどしたくないものであると考えたくなります。もちろん、生涯同じ家に住むという方もいらっしゃることでしょう。

もし、引っ越しの肯定的側面に意識を向けるとしたら、どんな点が挙げられるでしょう。

感じることは人それぞれだと思うのですが、「新しい人との出会い」とか、「新たな生活への期待」などを感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、逆に、「やっぱり前に住んでいたところの方がいい」と確認をつける人もいることでしょう。

また引っ越しする機会があるかどうかは別として、今後の自分自身の生き方がどのようなスタイルがあっているかを考えるきっかけとなるようにも見えます。

充分な内的な仕事をする時間

引っ越しを後悔している場合、もしかすると周囲は「もう引っ越しちゃったんだから、仕方ないよ」とか「新生活にシフトしよう」と言うこともあるでしょう。つまり、新生活を進展させることばかりに意識が向いていることもあるでしょう。引っ越しに限らず、人間の営みはこうした傾向があると思います。

確かに合理的、経済的ではあると思いますが、全てがそのように進められるとは限りません。

喪失感

新しい土地に意味を見出だすなどと上述してはみたものの、以前の生活を失ったという喪失感に目を向ける時間があっても良いのではないでしょうか。そしてそれは新生活を進展させることと同じくらいに意味のある作業にも感じられます。

過去を振り返ることに罪悪感を感じることもあると思います。

世間は何かと進展を求めますが、一方で何かを置き去りにしてしまってきているという側面もあるのではないでしょうか。 新生活へ移行した意味とは、十分にこのような内的作業を行う中で、ようやく見えてくるぐらいのものなのかもしれません。

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