通勤もまた大きなストレスになり得る存在であります。 満員電車に長時間乗っての出勤、これは日本社会独特のストレスを象徴する光景でもあります。昭和の時代からずっと続いています。
まず、通勤時間の長さによるストレッサーの強度の差が想像されます。通勤時間30分の場合と、2時間の場合では、ストレッサーの強度は当然2時間の場合の方が強くなると考えられます。
通勤電車は驚異的なストレス
次に、電車内の混雑状況も通勤というストレッサーを構成する大きな要素になると思います。混雑時は座ることもできず、2時間立ちっぱなしという可能性もあるわけですから、座れる電車と比較してストレッサーは大きくなると想像されます。 さらには、温度や空調の様子、座席シートや吊革によっても多少の差が出てくるように思います。
冗談にならない
片道2時間であれば、5日間で20時間の乗車になり、20日勤務では80時間になります。残業時間100時間を超えると、医師の診察が義務になるという法律があったように記憶していますが、それに近い数字になっています。
80時間を12か月間行った場合、年間960時間を通勤時間に費やすことになります。これは40日に相当します。ここまで計算するとその数字には驚いてしまいます。人類は長い移動距離をどうにか早く移動しようと躍起になってきた歴史がありますが、職場まで2時間かかるとはどういうことなのでしょう。
過酷な通勤で仕事を断念する人さえいるのでは
飛行機なら九州や韓国辺りまで行ける時間です。 意外と見過ごされやすいストレッサーなのではないでしょうか。仮に17:00に仕事が終わる職場で2時間の残業をした場合、帰宅は21:00になります。残業なしで通勤時間30分の人は17:30には帰宅できているのです。その差は歴然としてきます。冗談にできない話です。
東京で働くことに胸躍らせて就職した人が、あまりの通勤電車の過酷さにこんな生活を臨んだわけじゃないと言いたくなりそうなほどです。
心身の不調を覚えることもある
中には、この緊張状態から体調を崩す事さえあります。
戦場の最前線並みのストレスという話もあるくらいですから、不思議な事ではありません。
殺伐とした状況
通勤電車で座れるかどうかが、その一日の成否を決めるのでしょうか。1秒でも早く、車内に乗り込みたいとする人をたくさん見ます。
長い通勤時間なのか、それともほとんど眠っていないのかもしれません。その人にとっては、1時間座っているのと立って持ちこたえるのでは消耗が違うでしょう。
早い者勝ちという言葉がありますが、朝の通勤ラッシュ時はまさにそのものです。
この闘いに参戦したら、場合によっては弾き飛ばされ怪我をするかもしれません。
駅と言うのは色々な人がたくさん集まる場です。フラストレーションを溜めている人も交じっています。駅員にくってかかる人もいれば、乗客同士のトラブルも散見します。
元々のフラストレーションが取終結される場でもあれば、通勤がこれらを作り出している側面も十分にあるでしょう。ちょうど、あおり運転が形を変えているかのように見えます。
もう乗りたくない・・・対策を考える
もう電車に乗りたくないと思う人がいても不思議ではありません。
仕事や通勤では、どうしても電車での移動を避けられない環境にある人も多いでしょう。
ここでは、移住するとか、仕事を辞めるなどの方法ではない対策を検討します。
様々な可能性に言及しましたので、現実離れしている方法もありますが、お金をかけてでも、その負担を何%でも減らしたいと考える人もいるのではないでしょうか。
思わず特急券を購入
余りに疲れたときには、会社からの支給はないとしても、特急券を買いたくなるものです。通勤に特急?と妙なことを言う人もあると思いますが、通勤時間は馬鹿にならないものです。グリーン車でも許されます。
昨今、この発想は多少の市民権を得てきているようです。 周囲から、「お金あるね」などと言われてしまったとしても、倒れるよりはずっとましなことですから、内緒で使ってみてはどうでしょうか。 会社がこの辺りの事を深刻に捉えれば、特急券の支給もあってよさそうなものです。
自宅にまで帰らない
もう、どうにもならない時が人にはあります。明日も朝から通勤電車に乗って持ちこたえるような気力も体力も残っていない時です。
そんな時は、やむを得ずお金で解決することも一案ではないでしょうか。
つまり、職場近くのビジネスホテルに泊まるのです。
徒歩圏内でも良いですし、通勤が大変にならない程度に、少し気分を変えて知らない街に泊まるのも一興です。
これは、奥の手であり、月数回が限度でしょう。服をどうするのかと言う問題も残るので、下準備も必要です。
群集心理を逆手に取り、迂回路を開拓する
一つ思うのは、現代人は合理性を追求しすぎ、直線的な最短距離・時間に意識が固着する傾向があります。
例えば、15:23発品川行きと15:29発上野行きがあるとします。
この時、顕著に15:29は空いて、15:23は混雑します。
このような光景を何度も目の当たりにしました。
つまり、6分待てば、優雅に電車移動できるにも拘わらず、最短時間を多くの人が選択しているのです。
この群集心理を逆手にとれば、群集とは別な行動を開拓できます。
この辺が、一番対策のしやすい現実的な落としどころかもしれません。
近い・早い・便利・安いを捨てて、「快適」な方を選択するのです。
極端な場合には、始発に乗りどこかで時間を潰して出勤するのも一つです。朝に強い人は、かなり早く出勤するという手が取れます。
食事も済ませて、後は寝るだけにしてから帰宅する
通勤を最終段階において頭を過るのは、帰宅後の家事や諸々のことです。
これらは帰ってからでないとできないのですから、尚更に気が重くなります。
しかし、外食で済ませれば、或いは、お風呂もどこかで済まして、電車が空く時間を虎視眈々と狙えば、この問題は一部負担軽減できます。
毎日はできませんが、たまには、そのような日があっても良いのではないかと思います。
乗る車両を研究する
同様に、電車内においても密度が微妙に異なります。
密度を重視するなら、階段の下のような場所は高くなりがちですから、最後尾の車両を選択するなどが多少の対策になります。
ハイブリッド通勤
例えば、都内までは電車で移動して、そこから先は自転車での移動に変えるなどを指します。
よく計画し、練り込んでゆけば不可能な事ではありません。
最近は電動自転車が目覚ましい発展を遂げています。問題は、駐輪場でしょうか。シェアサイクルなどという取り組みも増えています。
場合によっては、タクシーをお願いします。しかし、都合よくタクシーが見つかるとは限りませんので、下調べも欠かせません。
攻めに転じて、リラクゼーション法を身に着けて臨む
一説によれば、満員電車は戦場並みのストレス値であると言います。このストレスと対峙するには無防備では心もとないものです。
これまでのところは、回避策的発想を並べ立てましたが、通勤電車を持ちこたえる方面からの対策にも手を付けられるのであれば、それも一つです。
我々、臨床心理的な観点からは、専門的なリラクセーション法の活用を挙げたいと思います。
多くのリラクセーションは、椅子に座った姿勢や、うつ伏せ、仰向けなどの安静な姿勢が基本になりますが、満員電車の最中で実践するとなると、立ったままの方法が求められることになるでしょう。
当オフィスにおいては、立位のまま、手首や肩、指などを弛める方法を組み合わせて、セルフケアのプログラムにしています。
果たして、満員電車の最中に役立てることが可能かどうかはわかりませんが、少なくともアフターケアや、乗車前の調整には活用の可能性があると思います。下記は、当オフィスが企画した勉強会の案内です。既に終了しておりますが、ご希望があればお問い合わせ下さい。
まとめ
現実離れした方法から、使えるかもしれない方法まで、その可能性に触れました。
これらを組み合わせ、カスタマイズすることで、少なくとも単調な通勤電車とは異なってくるのではないでしょうか。
10年も20年も、或いはそれ以上の長い間の旅になるのならば、少しでも快適なものにしていきたいものです。