平成27年12月にストレスチェック制度が施行されました。
まだ、実際に受けたことがない方もいると思います。ここでは、総合的な情報をまとめます。
法律上は産業医との関係が主題になりますが、我々のようなカウンセリングとの関連も、注目されている模様です。
ストレスチェック義務化の概要と背景
昨今、ストレス社会などと言われるように多くの職場においてもストレスが問題化しています。体の健康については、ご存知のように定期的な健康診断が行われています。心理的な面についての負担チェックの義務はこれまでありませんでした。
※50人未満の事業所については努力義務
職場のストレス
職場内においても、各種ストレスが発生していることは多くの方が経験している通りだと思います。人間関係、業務の負荷、長時間残業、異動、ハラスメントなど、様々です。
このようなストレス要因の把握から、環境改善の手がかりとできるかもしれません。
- 大阪労働局のユーチューブチャンネル:この動画を参照すると、ストレスチェック制度の背景事情なども理解できます。
各種背景事情を示すデータ
引用元は図の中に記しました。これは精神障害の労災補償状況をあらわしたデータです。H14年から令和4年にかけて7倍に増えています。出来事の累計も順位として示されておりパワーハラスメントが147で最も多くなっています。
次も同様の引用元の資料です。
こちらは、仕事の量、失敗、責任の発生等の割合が高く出ています。令和4年に急増しているように見えてしまいますが、注釈にあるようにこの年から設問の形式が変更されています。
人手不足を表しているようにも受け取れます。
現代社会で働くことには、これらのような背景事情もあります。
- 関連テーマ:仕事の悩みに関するカウンセリング
担当者の負担
ストレスチェック制度に限らず、新しい制度が目まぐるしく誕生しています。義務が増えることは、それでけ対応するスタッフや時間、費用が必要になります。
これらの点は、現在どのような様子になっているのかまだ現場の声がわかりません。
制度自体にいやな印象が出来てしまうと、せっかくの制度も形骸化してしまうのではないでしょか。
高ストレス判定が出た場合には産業医の他、相談先としてカウンセリングルームを準備している機関もある
チェックで高ストレスになった時、希望すれば産業医の面接指導を受けられます。事業所側は、希望に応じてそれを実施しなければなりません。実際どのくらいの人が希望しているのかは定かではありません。
また、産業医の他、高ストレス者に限らず相談先としてカウンセリングルームの所在を知らせている企業もあります。
制度の実施状況
こちらも厚生労働省です。2017年7月に、これまでのストレスチェック制度の実施状況などを公表しています。
- 全ての事業所が義務を果たせたようではなく、82.9%でした。
- 医師による面接指導を受けた労働者の割合は0.6%とあります。
産業医面接指導実施率
さてこの資料には、実施状況の概要が記されています。
その中に、推測にはなりますが高ストレス者がどのくらい産業医面談を受けたかも掲載されています。このデータによると0.6%の労働者が産業医面談を受けています。
高ストレス者の0.6%という意味ではなく、全労働者の中の0.6%という意味であると読み取りました。その辺りの事は詳述されていません。
また必ずしも高ストレス者が産業医面接の対象となるわけではありません。ストレスチェック実施者が認めた者とも並記されています。そして本人が希望するかどうかという点も関係します。
以下が該当部分の抜粋部分です、引用元は上記リンク先の資料です。
別な資料もありました。令和3年の調査事業内のものですが、検討会資料として令和6年にも引用されています。(資料引用元の詳細は図の中の記載をご確認下さい。)
この資料によれば、
2016年、2017年の高ストレス判定を受けた者は14-19%(n=1,060、900)であった。高ストレス判定者のうち、医師面接を受けた者は16-17%(n=153、168)であった。
とあります。この数字をどう考えたら良いのでしょう。高ストレス者が産業医面談を受けない理由も記されています。時間がなかったという人が20%の他、「面接指導がどのように役立つのかわからなかった」(36%)、或いは「必要性を感じなかった」(29%)という人を合わせると65%になります。
はじまったばかりの当時のデータですので、制度の理解も浸透していなかった時期であったという理由は一つでしょう。
最新の動向を知る
最新の動向を把握するには、検討会の資料に目を通す方法があります。
法律も必要に応じて数年ごとに見直されていくものです。
関係する参考情報リンク一覧
メンタルヘルスに関する情報が10年ほど前に比較すると、格段に入手しやすくなりました。
逆に情報化社会においては、どれを参照すべきか悩むことに繋がってしまいます。
管理職や、職場の産業保健スタッフが必要とする情報と、労働者個人では求める内容も異なります。
この20年程の間に、メンタルヘルス関連の情報は膨大になりました。
この10年と言っていいかもしれません。
2010年前後に、都内の駅前にはメンタルクリニックが幾つも開業されました。中には、リワークを専門化したデイケアを整備するクリニックも開院されています。
20年ほど前には、なにがしかの情報に辿り着く事さえ困難なことでしたが、インターネットの普及が主要因だとは思いますが、アクセスしやすい世の中になりました。
当オフィスにおいても、仕事の悩みに関係するカウンセリングも行っております。各種案内をご参照下さい。
はじまったばかりの制度です。参考となるサイトを一覧にしました。
厚生労働省該当ページ
こころの耳
厚生労働省の委託で、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が作成しているサイトです。職場のメンタルヘルスに関する情報が一通り概観できると思います。
動画によるコンテンツも作成されており、そこでは、職場のメンタルヘルスが概観されています。1本15分程度の動画コンテンツ4本で構成されています。
昨今よく見る形式のコンテンツで、演者の様子と同時に、パワーポイントの資料が映し出されています。何度も見ることができるので、職場内で社員教育などに活用している企業があるかもしれません。
そのほか、eラーニングと呼ばれるコンテンツもあり、ストレスチェック制度に関しても、早速コンテンツ化されています。
サイトの構成が、働く人向け、家族向け、事業所向け、支援者向けに分けられており、メンタルヘルスに関わる様々な人の情報源に活用できそうです。営利目的でなければ、掲載内容を活用することも可能な場合があるようです。サイト内の説明書きをご参照ください。専門家にとっても有用な情報があるかもしれません。
パンフレット類も多数ダウンロード可能になっています。目的に沿ったものがみつかるかもしれません。
現在でも更新なされているようです。新着情報などが掲載されています。
こころの耳では、働く人のメンタルヘルス全般の情報が掲載されています。ストレスチェックに関する箇所をピックアップしました。
- 参考サイト:こころの耳 ストレスチェック制度について
千葉県産業保健推進センター
全国に産業保健推進センターが設置されています。千葉県のサイトにも解説があります。
その他
- 医療分析センター
上にも記しましたが、医療分析センターでは、導入のイメージが掲載されています。ストレスチェックの外注と言えるでしょうか。このようなサービスを扱っている企業も増えています。
- 商工会議所
商工会もこのようなサービスを打ち出していました。
- 実施者の研修
医師と保健師が実施者でしたが、歯科医師や看護師・精神保健福祉士なども実施者の養成研修を受けることで実施者になれます。
学会・その他団体
関連する学術団体も各種あります。
各種統計・データ類
データを読みこなすには根気がいりますが、全体像の把握に役立ちます。
毎年、数年に一度実施される調査もあります。年度を変えて検索すると別なデータがみつかる場合もあります。
- 令和4年度公立学校教職員の人事行政状況調査について
- 国家公務員長期病休者実態調査
- 令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
- 令和4年度「過労死等の労災補償状況」を公表します
- 「令和4年版 過労死等防止対策白書」を公表します
- 令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
事例集関連
実際にどのように取り組んでいるかがわかると、自分の組織にも応用が利くかもしれません。
- 事業場におけるメンタルヘルス対策の取組事例集 厚生労働省(PDF)
- 心の耳の中に、職場のメンタルヘルスシンポジウムのページがあります。各種実践報告の動画が視聴できます。
ネットニュース
Yahoo!検索を使っていると、TOPページに突如労働関係の記事が目に入ることがあります。あれらを、リンク集としてまとめてみてはどうかと思いました。
元々は、別な団体が発表したものを取り上げていることがほとんどなのでしょう。
プレスリリース
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- 第11回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果を公表
「心の病」増加企業が急伸、世代別では10~20代が過去最高 日本生産性本部
- 第11回「メンタルヘルスの取り組み」に関する企業アンケート調査結果を公表
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最後にストレスをどう捉えて考えるか
ストレスチェックを受けた場合、その結果に驚く方もあるでしょう。義務化されてしまった以上は、受けざるを得ないという方も多くいるのだと思います。
それをきっかけに専門家への相談や、受診を開始する方もあると思います。
「きっかけ」という言葉を出したように、何かより良い方向性や生き方をを探していけるような事柄という可能性を十分に秘めています。
例えば、何が負担であったのか、嫌な事であったのか、これを意識することが有益に働くことがあります。知らず知らず、当然のことと疑問も抱かずに我慢し続けていたのかもしれません。
嫌でも避けられない事柄はたくさんありますが、嫌と堂々と認識したときの方が身を守りやすいのではないでしょうか。
まとめ
チェックで高得点となった場合、法律上は希望すれば産業医の関与があることが記されています。
その他、最近の動向として、カウンセリングルームを活用しようとする動きがあります。