フィクションです。
その日青年は、仕事の合間に回転寿司に出掛けました。
回転寿司は、なんとか定食のようにまとまった食事ではないため、時間を気にしている時にはもってこいなのだそうです。ですが、同じことを考える人は多いようでいつも混んでいます。サラリーマン風の人とそれから、近所のご高齢の方がかなりの数座っています。
お金がない青年は、心の余裕を失っていた
給料前の青年は、財布の中に800円しか残っていませんでした。
そのため、入念に今日食べる内容をシュミレーションしていました。
すると、680円におさまる計画でした。あと120円も残れば大丈夫だと思っていたのです。
ですが、混んでいるわけで時々皿の色を間違えて清算が合わないこともありました。
皿の色によってマグロ120円とかサンマ200円などと決められているのです。
でもそんなことで怒ってしまったらどうかと思っているのでした。実際、間違いがあった時でも不足しているとき以外はそのままにしてしまったこともあるのです。
皿の色が違う!?
よく見ていると、皿の色が違うものにネタが乗っています。
つまり、中トロの340円の皿(黒)にマグロが乗っていたのです。
混雑して間違えたのでしょうか。嫌な予感がするのでした。
でも会計の時には間違いはないだろうと思います。
会計
青年は自分が食べたネタ以上の料金を請求されました。なんと820円です。
これには青年もびっくりして声を荒げてしまいました。
「ちょっと待ってください!私は中トロなんか手を付けてませんよ!!」
店員さんはすぐに気づいて訂正してくれましたが、青年の興奮はおさまらずもう一言言ってしまいました。
「何回もこの店には来ているんです!!」
満員のお店では他のお客さんはちらっと見るだけで、皆黙々と寿司を食べ続けるのでした。
回想
青年は帰り道、自分が恥ずかしくなりました。なぜあんな大声を出してしまったのか・・・。
以前なら、100円位なんともなかったのに。
いつも我慢し続けてしまったのも蓄積していたのだろうか、何より800円しか残ってないという切迫感のためだろうか・・・。
確かに、そこで主張しなければ、財布の中身だけでは足りなかったのです。まさか警察を呼ばれることはないだろうと思いますが、一体どうなるのでしょう。
後日青年は店に謝りました。すると、店主が言いました。<お宅は以前、皿を間違えて30円安く請求してしまった時正直に申し出てくれた方ですね?あの時は大変失礼しました。忙しいと、ついつい・・・>
お互い様か・・・と救われたような気持もあれば、何に怒らされていたのかと天を見上げる青年だったのでした。
あとがき
なんとも悲しい話です、最後のやりとりだけが救いでしょうか。一体だれが悪いというのでしょう。こんな経験をしたら、どう気持ちの整理をつけて良いものか・・・
心に余裕をとは言いますが、その余裕を作り出す一因がお金だとしたら、そこには格差が生じるではありませんか。そんなことがあっていいはずがありません。
貧しくとも、人様には迷惑をかけない・・・とか、なんだとか散々教わってきた記憶があります。