今から数十年前の世の中に生きた人は、なぜ一秒でも遅刻すると給与が引かれるのに、10分残業しても残業代が1円もつかないという矛盾に直面することがあったのではなかろうか。
昨今、IT機器の導入により1分単位で勤怠が管理される世の中になった。
果たしてこれは、吉と出たのか凶なのか、その検討もないまま社会は動き続けている。
1分単位の世界は概ね窮屈と言えるか
概ねの印象としては窮屈の方に軍配が上がるのではないでしょうか。
いやどうでしょう。
1分単位の残業代は塵も積もればなかなかの金額になります。
時給1000円、週3日(15時間勤務)の場合
もし毎回1分の残業をした場合、年間ではどのくらいの残業代になるのでしょう。
時給1000円で計算してみました。
時給1000円の場合、6分で100円です。その六分の一ですから16.666・・・円です。
端数切捨てなのか切り上げなのかこれも気になるところですが、ここでは1分17円とします。
- 1週間:17円×三日分=51円
- 1ヶ月:51円×4週分=204円
- 12ケ月:204円×12ヶ月分=2448円
年間2448円と出ました。これはNHK代金の2か月分位に相当します。
また、残業を10分では下記のように2万円を軽く超えます。
- 残業2分の場合:4896円
- 3分:7344円
- 4分:9792円
- 5分:1万2240円
- 10分:2万4480円
残業は15分刻みなどとしていた会社もあったことでしょう。その場合年間2万円以上は自動的に切捨てになっていたわけです。同じように働いている人がいれば10人で24万4800円です。
都合よくやってくれたらうれしい
労働者にとっては面倒な事には目もつむり、1分でも残業した場合には支払ってくれる、そんな社会であったなら余裕が生まれるでしょうか。
現状、1分の残業に給与が発生する場合には、それと同じ分1分でも無駄にしてはいけないというプレッシャーを生んでいるように見えることがあります。
「まさかそんなことはないよ!」とおっしゃる会社の方もいることでしょう。
不確実な世の中においては、数字しか寄る辺がなく支配されているのかもしれない
コロナの2波辺りから、エビデンスとか、判断基準などという言葉が飛び交ったのを覚えています。
これに対して、曖昧にしている自治体と、はっきりとした数字を示す自治体とがありました。
どっちが良かったのかわかりませんが、曖昧な方は主観と言われても小回りの利くやり方でした。
数字で根拠を示した場合は、大丈夫そうな雰囲気であっても、数値が基準を満たさない限りは動きが取れないということになったわけです。
まとめ
数字で管理する事の他、もう一つには、その場の雰囲気や、その人の様子などを考慮するのはどうかと思うところです。
皆くたくたであることが目で見て明らかにわかる時、「さあ、あと10分時間が残っているぞ!」などと声をかけるよりは、「今日はこんなところだろ・・・」などと言ってくれる上司はいないものでしょうか。
クタクタの中、さらに10分位頑張ったところで大きな成果が出るとは思えないのです。
法的には問題ない、とか、基準を満たしている、などということが優先されるとき、もっとも単純なことを見落とす落とし穴が待っているように思うのです。