このブログでは、現代社会風の心理的テーマについて書いています。
今回、国民的ドラマ「北の国から」の名シーン、泥のついた1万円札を思い出しました。
あるフィクションを元に物語を書きました。
泥のついた一万円札を現代社会は認めない
その青年は、生活に困窮し数々の支払いに追われていました。
決して働いていないわけでもないのに、出て行くお金ばかりでいつも自転車操業のような状況だったのです。
あるとき、いよいよ生活がまわらない程の事態に直面してしまったのです。
友人へ電話するが、言い出せず終わる
ほんの7千円程度でした。
しかし、それがどうやっても工面できないのです。
残酷にも支払いを迫るハガキや電話がますます青年の心を追い詰めました。
ついに友人に電話をし、お金を借りようとしたのです。
- 青年:あ・・・元気?
- 友人:おっ、久しぶり、どうしたの?
- 青年:あっ、・・・いや、どうしてるかなーと思って
- 友人:ははは。相変わらずさ。今ちょっと出先で。また今度さ、ね。その内皆で。
- 青年:そうだね。ごめんよー忙しい時に。また今度!
結局言い出せず、ため息をつく青年だったのです。
休日に単発のアルバイトに働きに出る
連日働き続けているわけですから青年の疲労は概ねいつでも限界に達していました。
しかし、たまの休日を使って、アルバイトに出ることを決意したのです。
1日働けば8000円くらいになるそうです。
しかも、支払いも早いそうです。
インターネットで色々と調べて直近の仕事を得ることが出来ました。
なんと、当日現金払いとのことで、これで支払いに間に合うと喜んでいたのです。
そして・・・無理をしましたが、無事に8000円を得ることが出来ました。
帰宅時大雨に見舞われる
昨今の天候は本当に不安定です。
いつからか日本の気候は亜熱帯のようになっています。
ようやく仕事を終えて帰宅しようとする青年でしたが、交通費を節約するため40分でも歩いて帰るつもりだったのです。
その時の事でした、黒い雲がどこからともなくやってきて辺りを覆いつくし、謀ったかのように猛烈な雨が青年に降りかかったのです。
40分間青年は、身じろぎもせず歩き続けたのでした。
靴は浸水し、スーツもずぶ濡れとなりました。
バックだけは浸水を免れたようですが・・・
いざ支払いへ向かう!
翌日、青年は朝一である支払いに出掛けました。
窓口でお詫びと共に直接支払おうとしたのです。
昨日稼いだお金はバックの中の封筒に収められていました。
そこからお札を取りだし、職員に誘導されて自動精算機にそのお札を入れたのです。
数枚が入ったところで、その機械は突如動作を停止しました。
一体何が・・・
もしや・・・と思った青年は、残りのお札を確認しました。
すると濡れていたのです。
濡れて乾ききっていないという具合でした。
昨日の大雨が、バックの中にもやはりしみ込んでお札にまで達していたのです。
青年の脳裏に、古いドラマの一コマが浮かびました。
泥のついた一万円札をもらって感極まる息子の様子です。
「あのお金も、こんな風に自動精算機にはじかれてしまうのだろうか・・・」
「これが現代社会の出した答えなのか!」
と、心の中でしか叫ぶことはできなかったのでした。
後書き
青年がアルバイトに出たその決意は、いったいどう報われたというのでしょう。
行く場を失った思いが怨念のごとく漂います。
誰か気づいてはくれないものでしょうか。