心理学概論のようなテキストを開けば、フロイトの名前はやはり登場します。そして、臨床心理学の分野ではありますが、フロイトの提唱した理論などが掲載されているのです。こうしたことを考えると、フロイトの残した仕事は、基礎心理学の分野でも大きな影響力を持っているということなのではないでしょうか。
フロイトというと、無意識の概念、自我構造論、防衛機制などが良く知られています。それから、夢についても触れることがあります。
またフロイトの理論は、心理学の範疇に収まらず、教育や看護のテキストに登場することもあるでしょう。(「ジグムント・フロイト」もご参照下さい。)
防衛機制の代表格は抑圧
簡単にではありますが、フロイトの防衛機制の例を挙げてみたいと思います。まず、防衛機制とは、自我による心的な防衛機能のことを指しています。つまり、受け入れがたい現実や葛藤に直面した際にそれをやりくりしようとする働きの事です。
フロイトが最も重視した防衛機制は、抑圧であり、精神分析の中核的概念と考えても良いくらいではないでしょうか。
無意識の領域に、様々な感情を押し込めるという防衛機制で、意識的に考えないようにすることとは区別されています。フロイトの意識の3層構造で言うところの、意識・前意識・無意識の3つの内、最も深い無意識の領域に押し込めていく働きと言えます。
精神分析の基本は、この無意識に押し込められたことを意識化していくことにあると聞きます。その方法として、フロイトは自由連想法を用いていたことが知られています。
昇華
もう一つ、防衛機制の例を挙げると、昇華という機制があります。これは多くの人が経験している機制ではないかと思います。何らかの欲求を芸術やスポーツなどに向けることで解消しようとする機制です。
例えば、何かのきっかけに仕事で非常に悔しい思いをした人がいるとします。しかし、職場でその悔しさをまき散らしてしまってはあまりに大人げないと感じ、ゴルフの打ちっぱなしに寄ってから帰宅するなどがその例となるでしょう。
思い切りゴルフボールを打ち放つことで、悔しさをゴルフというスポーツに昇華したわけです。昇華という言葉を使うと難しい感じがしますが、我々が良く使う、ストレス解消という言葉に近いようにも感じます。
合理化
最後にもう一つ触れておくと、合理化という機制があります。
例えば、デパートの安売りで買いたいと思っていた商品を買い損ねてしまった人がいたとします。しかし、デパートに到着した時には既に人がいっぱいで整理券を配り終えていたのです。
そのような時、その人は「並んでまで買おうなんて思わないわ。こんなに寒い中、風邪ひかなくてよかった」というように、非常に合理的な考え方をして、手に入らなかったという衝撃から身を守ったのです。
これが合理化という防衛機制です。