ソーシャルサポートとは、周囲のサポートを指す概念である。 我々が、ストレッサーに曝された場合、それにどうにか対処しようとする。
コミュニティ心理学の草分けである、Caplan,G.によって概念化されました。(別な文献では、1974年のJohn Casselであるとされている。)
ソーシャルサポートの例を挙げて整理する
このストレッサーの種類によって、ある種のサポートが 支えになることがあり、結果的には、ストレス反応を緩和する ことにも繋がるのである。
例えば、仕事で疲労困憊の中、帰宅したとき、食事の準備が なされているのと、そうでないとのではどちらが負担を減らす ことにつながるだろうか。 基本的には、準備されていた方が負担は少なく済むものである。
もし準備がなかったならば、疲労困憊の中自分で、野菜を 刻んだり、お湯を沸かし、ご飯を炊いたりする。 こうしている間に時間はどんどんと過ぎ去り、睡眠時間が その分短くなるわけである。 一方、準備がなされている場合には、すぐに食事を 取り、明日への備えをすることもできるわけである。(関連ページ:仕事終わりに料理したくない!手間を省く工夫を検討する)
このように、ソーシャルサポートの有無によって、当人に かかるストレッサーの影響は変化する。(この他コーピング他も 関係する) ストレスケアは、個人的な要因だけではなく、その人の周辺環境 も勘案したものとなれば、益々意味を成すものとなりそうである。 もしある社内で、一人暮らしの社員のストレスマネジメントを実践しようと したなら、食事に対する支援が意味を持つ可能性もあり得るだろう。
例えば、ヘルシーな定食を提供する飲食店と協力し、会社側が 半額を負担するなどして食券を配布したら、負担が減り助かるという 職員も少なくないのではないだろうか。
ソーシャルサポートの具体例
さて、もう少しソーシャルサポートについて幾つかの具体例をここに示しておきたいと思う。
まず、サーシャルサポートを大分類すると以下の表のようになる。これから挙げる例は、これらのどれかに該当するものになります。
参照元を参考に作成:e-ヘルスネット ソーシャルサポート
以下それぞれのサポートについて触れますが、どうやらこの分類は明確に分けることが難しいと感じるものが多くありました。愛妻弁当などという言葉があるように、弁当を作るという道具的サポートではあっても、むしろ情緒的サポートという面が強いのではと感じる例もあります。
参考文献
情緒的サポート
一緒にご飯を食べる事が情緒的サポートになる可能性はあるでしょう。談笑しながらの食事はなぜかおいしいものです。これはコロナで封じられていた会食を思い起こします。
会食がどんなに心の支えになっていたかと感じた人も大勢いたと思います。
職場でも、最近は煩わしいものとされる傾向がありますが、先輩が仕事帰りに後輩と飲みに行ったり食事を共にすることがあります。そこで色々と愚痴を聞いてくれたりする先輩もいたものです。
道具的サポート
冒頭の画像のように、誰かが気を利かせてお風呂を沸かしておいてくれたらそれは立派なソーシャルサポートの一例である。
食事や洗濯などの家事を済ませてくれる家族がいる
家事の手間は本当に大変なものです。自分で全てをやらなければならないわけですが、もし誰かが手伝ってくれていたらどんなに素敵な事でしょう。雨が降る前に洗濯物は移動され、ましてや畳んでくれていたら助かります。
猫の手も借りたいとはよく言ったものです。
雨の日は車で送迎してくれる
雨というのは非常に厄介なものです。両手で荷物を持って出かけようとしていても、雨が降っていたら片手はふさがってしまうのです。そうでなければ合羽でも着て突き進むしかありません。
そんな時、「今日は車送っていくよ!」などと申し出があったら渡りに船というものでしょう。
そういう友人が近所にいたら頼もしい限りです。
学校が取り組む生徒・学生支援
- 就職活動に際して、模擬面接を行ってくれる教授やキャリアカウンセラーがいる。
- 学校で、勉学に不安を感じた時、必要に応じて、学習指導を個別設ける教員がいる
情報的サポート
このような情報発信ブログもある種の情報的サポートになっている可能性があるのでしょうか。
病院マップを作ってくれた先生がいた
大学でも仕事でも、馴染みのない土地で新たに生活をはじめることがあります。
そんな時、インフルエンザにでもかかったら心細いものです。そして、どこに病因があるのかGoogleで検索して探さなければならないのです。
ベテランの上司や先生が、最寄りの病院にあいさつ回りをして案内先のように病院マップを作成してくれたらこれは情報的サポートと呼べるでしょう。
評価サポート
これは会社勤めなどしていると、時々経験するフィードバック面接のような場面が一つでしょうか。
「昨年のあなたは良く働きましたね。この調子でお願いします。」こんな風に上司から言われたら、<自分の働き方はやはりこれでいいのだ!>と再認識できるのではないでしょうか。
<これでいいのだ!>という心の構え方は精神衛生上バランスの取れた状態と言えるでしょう。
サポートの押しつけは逆に辛くなる
最後に触れておきたいのは、ソーシャルサポートの押しつけについてです。
このことは心理支援を考える時には重要な事で、おしつけがましい支援者の態度が逆に負荷を生むことがあります。
「世話焼き」という表現がありますが、これはどちらにも転ぶ可能性があります。
世話焼きな人がいて持ちこたえ、つながりあっていられる面も大きいわけですが、逆に「お節介だ」という体験を生んでしまう事もあります。この辺りの事についてはよく検討される必要があります。
研究論文のテーマにもなっているほどです。
- 関連論文:ソーシャル・サポート、ネガティブ・インタラクションと精神的健康 実践女子大学学術リポジトリより
個人レベルでは、なんらかの相談をしたいと思った時、「ではそれを誰に相談するか?」という一考が大事なことになります。
この相手の選別が上手くなることは、非常に精神衛生の向上とも密接な関係を持ちます。
- 関連ページ:仕事の悩みを相談する相手は誰なのか
まとめ
例を挙げれば膨大な数になるだろう。 幾つかを見渡してみるだけでも、その幅の広さに気づかされる。 しかし、サポート内容と、本人のニーズがマッチしないことには、あまり 意味をなさないサポートもあることになる。 就職をせず、進学する人にとっては、模擬面接のサポートはそれほど 重要な位置づけにはならないだろう。
また、サポート体制があったとしても、それを知らなければ、ないのも 同然である。
これらが上手く機能していると、ストレスを緩衝してくれるのである。