ストレスを感じるとか、わかりにくくなっているということにも触れましたが、そもそも、同じストレッサーでも、人によってその感じ方は異なることがあります。
ストレスとなる事は考え方・性格などにより、それぞれ異なる
例えば、ロックミュージックを心地よいと感じる人もいれば、ロックは肌に合わないという人もいます。場合によっては、肌に合わないと感じている人にロックを無理強いしたら、それはストレスと体験されるでしょう。
一方、心地よいと感じる人にとってはストレスとは体験されないと考えられます。 このように、個人の感じるところにより、ストレスになったり、そうではなくなったりしてきます。 このように考えると、ストレス対策はますます一元化できないのではないかという考えが強まってきます。
身内や友人にも個人差は当然ある
人間の難しい所ですが、例えば夫婦や友人同士、家族であっても、ストレスと感じる内容は異なってくると思います。 夫婦で共同生活を始めた時、段々と生活様式の違いが明らかになり、その都度ストレスを感じるということもあるでしょう。
それは洗濯物の畳み方であったり、エアコンの温度、食事の時間・食べ方など微妙なことであると思います。 食べ方については、経験のある人もいると思います。箸の持ち方を指摘された人もいることでしょう。
また音を指摘されるということもあるでしょう。さらには好みや偏食もテーマにのぼることがあるでしょう。中には離婚を考えるぐらいのご夫婦もあるかと思います。 エアコンの温度にしても、非常に議論の余地をもつ対象ではないかと思います。
個人差を大きく考慮する
さて、下記のように、ストレスの一連の流れは表すことができます。
- ストレッサー→人→ストレス反応
このように、人がストレッサーに曝された場合、ストレス反応が生じるわけですが、「人」の部分が非常に難しい部分になります。 心理学は刺激と反応のみを対象とした時代がありましたが、後に、刺激と反応の中間にある要因を重視するように展開していきました。
- S-R理論から、S-O-R理論へ変遷したわけです。
カウンセリングにおいてストレスを理解しようとすれば、やはり個別性という点が重要となります。 集団実施するストレスマネジメントの難しい所は、個人差がある点を挙げることができると思います。一律のストレス対策だけではどうしてもケアしきれないことがでてきます。より個別の、その人その人にあったケアを探す方法とも言えるでしょう。
スキーマなるものによって変わるストーリー
突然ですが・・・下記の物語をお読みください。これにより個人差があることを認識できるかもしれません。
その日、太郎は自宅で本を読んで過ごしていた。すると、外から友人の話す声が聞こえて来た。その友人男性は大学の同期であった。
友人の声を聞いたその時、太郎はとっさにあることをしたのだった・・・
□
- 友人を自分の部屋に招き入れようと玄関に向かった
- 〇〇〇・・・・。
答は、「1」ではありません。
□
太郎は、家の中の金目の物を全て片付け、厳重に戸締りを行った。家の人には、誰が尋ねてきても居留守を使うので絶対に取り次がないように念を押した。
その友人には、何度もお金を貸すように頼まれて、一度も返してもらったことがなかったのだ。友人は、こうして諦めて帰って行った。
さて、非常に急激な展開で恐縮でしたが、この物語の前半部分だけ読むと、当然のことのように、我々は、古い付き合いの友人を家に招きいれようとするだろうと想像することでしょう。
しかし、物語は全く別な展開をしました。最後まで読むと納得が行くと思いますが、友人には、お金を貸してくれと言われるばかりだと思って、戸締りを厳重にしたのです。通常、この展開を想像する人は少ないと思います。
ここには、スキーマの働きが隠されているのです。
人間の情報処理過程を学んでいくと、スキーマという概念に出会います。一般的に馴染みのない言葉ですが、認知心理学の分野で主に用いられる言葉です。またうつ病について説明をする本などにも時折登場します。カウンセリングにおいても、時に意識することがあるものです。
人は、生活する中で様々な刺激を受け、その情報を処理しています。その量はあまりに膨大で、目に見えるものから匂いや音などにも及びます。
この膨大な量の情報を処理するには、節約的にしなければとても追いつかないということもあるでしょう。
フロイトの無意識の概念に通じるところもありそうですが、通常は意識にのぼらないことでも我々は情報を受け取り続けているのです。例えば、いつもの通勤の電車の中から見える光景を全て覚えているかといえば、ほとんど記憶に残っていないのでしょう。
毎日見ているので、覚えていても良いようにも思いますが、あまり重要な情報でないということなのでしょうか、その多くは強く意識されるには至らないことが多いようです。
スキーマとは
情報処理に貢献していると考えられることに、スキーマの存在があります。スキーマとは、自動的に情報を処理してくれるような機能を持ち、同じような刺激情報に対して、即座に次の思考へつなげます。
消極的に見れば、いつも通りの思考パターンを導き出す(いわゆる自動思考)存在とも言えるかと思いますが、本質的には肯定的な意味合いで持ち合わせている機能なのではないでしょうか。
人は、何かの刺激を処理する場合、その刺激そのものを処理するというよりは、自分なりのフィルターを通して処理するわけです。
例えば、パソコンがなかなか起動されないときには、故障を即座に考える人もいると思います。しかし、コンセントが抜けているということかもしれないわけで、事実と認識が異なる可能性もあるわけです。
何度もコンセントが抜けていることを経験している人は、故障よりも先に、電源の事を即座に考えるのではないでしょうか。
これによりかなりの節約が起きます。
電話が繋がらないのは嫌われているからではないか・・・
コンセントの話に限らず、我々は電話が繋がらないときに、嫌われていると感じ、落ち込むこともあります。これもスキーマや自動思考と関係した認知的処理と言えるでしょう。
この場合、単に情報処理に限らず、気持ちの上で嫌な感覚が残り、中には自尊心が傷つくということも考えられると思います。
人間として、傷つくとわかってはいても、ついつい電話してしまうことも時にあるものです。この時、スキーマは何を物語っているのでしょう。認知が現実とそれてしまっているのでしょうか。
本当に嫌われているのでしょうか、いや、だからこそ、人間関係にはより慎重になろうということでしょうか。節約しているというならば、私は後者ではないかと感じています。
スキーマに対するネガティブなスキーマを抱いていると、物事の本質が見えなくなるようであります。
まとめ
ストレスがない、感じないという場合でも概ねストレスを感じる状況を体験できる環境を設定することは可能ではないかと思います。
例えば物理ストレスは条件を動かしやすいものです。
暑さや寒さで試してみるとすれば、27℃では差が生じなくても、35℃までいけば、ほとんどの人がストレス状況にあると認識されるのではないでしょうか。もっともこの場合、暑さが際立ちすぎて生理的な反応が強く出てストレス反応を観察しにくいかもしれません。
ですが、イライラする人が増えたならそれは一種のストレス反応になるわけです。