アブラハム・マズローはニューヨークに生まれ、後に心理学を学ぶようになった。1967年~1968年にはアメリカ心理学会の会長を務めている。
行動主義の中で学んだ経験も持つが、後には、ロージャーズらと同様に、人間性心理学の開拓者として数えられるようになっていた。(アルフレッド・アドラーにも師事した経験を持つ)また、晩年トランスパーソナル心理学の基礎も築いた。
彼が主張した欲求の階層は、非常に多くの人に知られるに至り、現在では心理学を学ぶものだけにとどまらず、看護師などの教育課程にも紹介されている。心理学のテキストを開けば、マズローの紹介が散見されるものである。
アブラハム・マズローが提唱した欲求の階層説
マズローは、人間の欲求を、下記の5つに分類した。
生理的欲求を、根底に生理的欲求が置かれている。これは、食べ物や飲み物等の生命を維持することに必要な欲求の事である。これらが満たされていないと、それらを求めようとする欲求に支配されることになるといい、2番目の安全欲求は生じないか、生じても弱い欲求になるという。
ピラミッド型構造の欲求階層
このように、一つの欲求が満たされることで、次の欲求が生起すると考え、それを5つの段階に分けている。図解すればピラミッド型の構造になる。
- 生理的欲求
- 安全欲求
- 所属・愛情欲求
- 自尊欲求
- 自己実現欲求
しかしながら、必ずしも、欲求を満たさなければ、別な欲求に到達できないとするものではない。
衣食住に納得
さて、日本では、よく衣食住を、生活の基本とすることがある。これは、マズローの考えとも一致するのではなかろうか。
もし、明日仕事に着てゆく服がなかったなら、我々は、仕事を休むことになるだろう。また、真冬の雪の日に出勤するときに、コートがなかったらどうであろうか。仕事どころではなくなってしまうかもしれない。
もし、毎日の食事が確保されていなかったら、我々の生活はどうなるだろうか。
やはり仕事どころではないし、途中で力尽きてしまうかもしれない。
また、住まいがなければ、我々は一日の疲れを癒すことも困難になる。雨風の中を、耐えられるだろうか。犬に追いかけられることもあるだろう。
こんな時、気持ちは安心していられるかと問われれば、多くの場合簡単なことではない。
衣食住が少なくとも確保されていることで、我々はまマズローが言うところの生理的欲求や、安全欲求を満たすことができているのではなかろうか。
まとめ
カウンセリングにおいて最もといえるほど重要なことは、安全面への配慮です。
これはマズローの理論と通じるところがあります。
世の中には、無理やり何かを押し進めさせようとするやり方がたくさんあります。
「怖がらないで挑戦しなさい」とか、「もっと大胆にやりなさい!」などという言葉を聞いたことがあるかと思います。それで物事が進むこともあるわけですが、安全・安心が十分に溜まってくると物事が進展するという流れも同じように存在しています。